安田善次郎の商売哲学と永久投資
長期投資について考えていると、ときどき昔の商人の生き方が気になる。
その中でも、私が興味を持っている人物が安田善次郎である。
安田善次郎は、江戸時代末期から明治にかけて金融業で財を築き、安田銀行を中心とする安田財閥の基礎を作った人物だ。
彼の商売を見ていると、派手な成功物語というよりも、「商売とは何か」を考えさせられる。
安田善次郎の商売の基本にあったのは、何よりも「信用」だった。
商売では、目先の利益を追うことはできる。
しかし、一度失った信用を取り戻すのは難しい。
だからこそ、約束を守る。
無理な商売をしない。
堅実に利益を積み上げる。
こうした一見当たり前のことを積み重ねていく。
私は、ここに商売の本質があるように思う。
もう一つ興味深いのは、「薄利でも回転させる」という発想だ。
金融業は、商品を一つ売って大きな利益を得る商売とは少し違う。
多くの顧客から資金を集め、それを必要とする人や企業に回す。
一件一件の利益は大きくなくても、信用を積み上げ、取引を増やしていけば、事業そのものが大きくなっていく。
つまり、派手なホームランではなく、小さな利益を積み重ねる仕組みを作る。
この考え方は、現代の企業経営にも通じるのではないだろうか。
そして、商売を長く続けるためには、顧客から必要とされなければならない。
「自分が儲かる商品」を売るのではなく、
「相手が必要としているものを提供する」
という視点が重要になる。
これは当たり前のようで、実際には難しい。
企業は利益を追求する存在だが、利益だけを追いかけていると、いつか顧客から見放される。
反対に、顧客に必要とされる仕事を続けていれば、結果として利益がついてくる。
安田善次郎の商売から感じるのは、そんな長期的な視点である。
ここまで考えると、長期投資との共通点が見えてくる。
私たち投資家も、企業の「今期の利益」だけを見る必要はない。
その会社が、
- 顧客から信用されているか
- 社会に必要とされているか
- 無理な商売をしていないか
- 利益を継続的に積み上げられる仕組みを持っているか
こうしたことを見る必要がある。
株価は毎日動く。
しかし、企業の信用や顧客との関係は、一日で作られるものではない。
10年、20年という時間をかけて積み上げられるものだ。
だから私は、安田善次郎の商売哲学を眺めていると、永久投資という考え方を思い出す。
永久投資とは、単に「絶対に売らない」ということではない。
長い時間をかけて信用を積み上げ、社会に必要とされ続ける会社を探すこと。
そして、その会社が利益を積み重ねていく時間を、自分も株主として共有すること。
これは、短期間で株価が何倍になる会社を探す投資とは、かなり違う。
むしろ、
「この会社は、30年後も商売を続けているだろうか」
「30年後も顧客から必要とされているだろうか」
そんな問いを投げかけながら企業を見る。
安田善次郎が生きた時代から、経済も技術も大きく変わった。
それでも、商売の根本にあるものは、そう簡単には変わらないのかもしれない。
信用を積み重ねる。
必要とされる仕事をする。
無理をせず、利益を積み上げる。
そして、その積み重ねを何十年も続ける。
結局、強い商売とは、こういうものなのではないだろうか。
そして長期投資家が探すべき会社も、案外そこにあるのかもしれない。
派手に儲ける会社ではなく、信用を積み重ねながら、何十年も商売を続けられる会社。
安田善次郎の商売哲学は、昔の話でありながら、私にそんなことを考えさせてくれる。
永久投資とは、企業と時間を共有すること。
その相手を選ぶときには、株価だけではなく、**「この会社は、どんな商売をしているのか」**をじっくり見てみたい。
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