ツムラ――「良薬は必ず売れる」130年企業が挑む、漢方の世界化
1.企業概要――「良薬は必ず売れる」から始まった会社
ツムラ(4540)は、1893年4月10日創業の医薬品メーカーです。
創業者は初代・津村重舎(つむら じゅしゃ)。
1893年、奈良から上京した津村重舎は東京・日本橋に「津村順天堂」を創業し、家伝の婦人薬である生薬製剤「中将湯」の販売を始めました。
そのとき重舎が抱いていた信念が、
「良薬は必ず売れる」
でした。
これは、単なるキャッチコピーではありません。
「良い薬を作れば、人々に必要とされる」
という、品質を最優先する商売哲学だったと考えられます。
そして現在のツムラは、
経営理念:「自然と健康を科学する」
を掲げています。さらに企業使命として、
「漢方医学と西洋医学の融合により、世界で類のない最高の医療提供に貢献します」
としています。
創業から130年以上経った現在も、「良薬を届ける」という原点が、漢方を科学的に研究し医療へ届けるという形で受け継がれている。
ここが、私がツムラを長期投資の対象として面白いと考える最大の理由です。
2.創業者・津村重舎の商売哲学
津村重舎の面白さは、伝統だけを守ったわけではないことです。
むしろ創業当初から、
良い薬を作る
↓
それを知ってもらう
↓
研究する
↓
生産体制を作る
という、かなり近代的な経営を行っています。
例えば1895年には、当時としては珍しかったガスイルミネーション看板を制作し、アドバルーンなども使って中将湯の知名度を高めました。
そして1919年には目黒工場を建設。
1924年には津村研究所と津村薬草園を開設し、生薬・薬用植物の研究を進めています。
つまり津村重舎は、
「良いものを作れば売れる」だけではなく、「良いものを作り、それを研究し、必要とする人に届ける」
というところまで考えていたのではないでしょうか。
この姿勢は、130年後のツムラにも残っています。
3.「伝統と革新」を両立させる会社
ツムラの企業文化を表す言葉として、私は**「伝統と革新」**に注目したいと思います。
ツムラは「伝統」を単なる過去の遺産とは考えていません。
公式サイトでも、伝統とは単なる歴史の積み重ねではなく、未来に向けて受け継ぐものだという考え方を示しています。
これは長期投資家にとって非常に重要です。
なぜなら、
伝統だけの会社
は時代に取り残されます。
一方で、
革新だけの会社
は過去の強みを失う可能性があります。
ツムラは、
漢方という130年以上の伝統を守りながら、科学・エビデンス・DX・個別化医療へ進もうとしている
わけです。
4.なぜツムラの漢方には強い競争力があるのか?
ツムラを見るとき、
「漢方薬を作っている会社」
だけでは不十分です。
同社は現在、医療用漢方製剤市場で80%以上の国内シェアを持つリーディングカンパニーです。
これは非常に大きな意味を持ちます。
漢方薬は、単純に原料を仕入れて薬にすればいいわけではありません。
- 生薬の調達
- 品質管理
- 原料の安定確保
- 製造技術
- 医師への情報提供
- 臨床エビデンス
- 医療現場への普及
など、長年の積み重ねが必要です。
つまり、
130年の歴史そのものが参入障壁になっている
のです。
5.「漢方を科学する」という強さ
私がツムラを長期投資で評価するうえで、さらに重要だと思うのがここです。
漢方は「昔からある薬」で終わっていません。
ツムラは、医療用漢方製剤について安全性・有効性・均質性を科学的に追求しています。
さらに、
- 診療ガイドラインへの収載
- 医師への情報提供
- 漢方医学教育
- 個別化医療
- 未病領域
- デジタル技術
などへ事業領域を広げています。
つまり、
「伝統医学を守る会社」
ではなく、
「伝統医学を現代医学の中に組み込もうとしている会社」
なのです。
この違いは非常に大きいと思います。
6.そして、ツムラの「次の成長」は中国
ここは今後の投資判断でかなり重要です。
ツムラは日本国内だけでなく、中国事業を成長戦略の重要な柱にしています。
2026年3月期の中国事業売上高は314.4億円で、前年の206.3億円から52.4%増加しました。
一方、国内事業の売上高は1,611.7億円で、前年比0.4%増にとどまっています。
つまり現在のツムラは、
日本=成熟市場
中国=成長市場
という構造が見え始めています。
さらに2027年3月期会社予想では、中国事業売上高を460億円まで拡大する計画です。
ここは長期投資家として注目しておきたいところです。
7.長期投資向け簡易指標
今回は、過去3年+最新年度を並べてみます。
| 指標 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,400億円 | 1,508億円 | 1,811億円 | 1,926億円 |
| 営業利益 | 209億円 | 200億円 | 401億円 | 352億円 |
| 純利益 | 165億円 | 167億円 | 324億円 | 281億円 |
| 営業利益率 | 14.9% | 13.3% | 22.2% | 18.3% |
| ROE | ― | ― | 11.4% | 9.0% |
| 1株利益 | ― | 219.83円 | 427.15円 | 376.28円 |
| 年間配当 | ― | ― | ― | 144円 |
ここで注意したいこと
一見すると、
2025年 → 2026年
で利益が大きく減っています。
しかし私は、これだけを見て「ツムラの業績が悪化した」と判断するのは早いと思います。
2026年3月期は、原料生薬在庫の戦略的な積み増しによるコスト増加や、上海虹橋中薬飲片有限公司の連結、販管費増加などが利益を圧迫しました。
一方で売上高は6.4%増。
そして会社は2027年3月期に、
売上高2,136億円
営業利益375億円
を予想しています。
つまり、私は現在のツムラを
「利益が落ちた会社」
ではなく、
「成長投資とコスト上昇で一時的に利益率が低下している会社」
として見ています。
もちろん、この仮説が正しいかどうかは今後の決算で確認する必要があります。
8.配当政策も長期投資家には面白い
ツムラは株主還元について、連結配当性向40%を目安とし、2031年度に向けて50%以上を目指す方針を示しています。
さらにDOEについては、2031年度に**5%**を目指しています。これは永久投資家にとって好印象です。
利益が多少上下しても、
企業価値を高める投資
と
株主への還元
を両立させようとしているからです。
9.長期投資オススメ度
★★★★★ 5 / 5
私はツムラを**「長期投資オススメ度★★★★★」**と評価します。
理由は、
- 1893年創業
- 創業者の思想が現在にも残る
- 医療用漢方で圧倒的な国内シェア
- 高い営業利益率
- 漢方という参入障壁
- 科学的エビデンスへの投資
- 中国市場という成長余地
- 配当・DOEを重視する株主還元
- 「伝統と革新」を両立している
からです。
特に私が評価したいのは、
「130年前の事業をそのまま続けている」のではなく、「130年前の精神を残しながら事業を変化させている」
ことです。
まとめ
ツムラ(4540)
創業:1893年
創業者:津村重舎
経営理念:自然と健康を科学する
企業使命:漢方医学と西洋医学の融合
長期投資オススメ度:★★★★★
そして、ツムラを一言で表すなら、
「130年前の創業精神を、漢方の世界化という未来につなげようとしている会社」
ではないでしょうか。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の株式の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任で行うものであり、本記事の内容に基づいて生じたいかなる損失についても、著者および本ブログは一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、最新の決算資料、有価証券報告書、適時開示資料等をご自身で確認したうえで、ご自身の責任において行ってください。
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