―― それは“安さ”ではなく「資本の使われ方」を問う指標
PBR(株価純資産倍率)は、
PERと並んで最もよく知られた投資指標の一つだ。
PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)
一般的には
-
PBR 1倍割れ → 割安
-
PBRが高い → 割高
と説明される。
だが長期投資家、ましてや永久投資を志向する投資家にとって、
この理解はあまりにも浅い。
PBRは「安い会社を探す指標」ではない。
経営が、株主資本をどう扱ってきたかを問い詰める指標である。
そもそもPBRは何を表しているのか
純資産とは
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過去に稼いだ利益の蓄積
-
株主から預かった資本
-
会社に“残っているお金と資産”
の集合体だ。
PBRとはつまり、
「その資本が、今どれだけの価値を生んでいると市場が評価しているか」
を示している。
ここで重要なのは、
PBRは未来を見ている指標だという点である。
長期投資家が「PBR 1倍割れ」に飛びついてはいけない理由
理由①:資本を寝かせているだけの会社は安くて当然
PBRが低い会社の多くは
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現金を溜め込む
-
投資をしない
-
事業が伸びない
つまり
資本を有効活用できていない。
市場は冷酷だ。
使われない資本には、価値をつけない。
PBR 1倍割れは
「割安」ではなく
**「失望の結果」**であることが多い。
理由②:解散価値と事業価値は別物
PBRは
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土地
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現金
-
有価証券
といった帳簿価値を基準にする。
だが長期投資家が欲しいのは
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ブランド
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顧客との関係
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技術
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参入障壁
といった、帳簿に載らない価値だ。
PBRが低いからといって、
それらが自動的に手に入るわけではない。
理由③:低PBRは“構造問題”の可能性が高い
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産業が縮小している
-
技術転換に乗り遅れている
-
ガバナンスに問題がある
こうした企業は
何年待ってもPBRが上がらない。
永久投資とは「我慢比べ」ではない、構造を見誤らないことが前提だ。
それでも長期投資家がPBRを見る理由
PBRは使い方を誤らなければ、
非常に強力な思考ツールになる。
見方①:ROIC・ROEと必ずセットで見る
PBRは単体では意味を持たない。
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ROEが高く安定 → 高PBRは合理的
-
ROEが低迷 → 低PBRは妥当
PBRは
「この資本効率なら、いくら払ってもよいか」
という市場の答えだ。
見方②:時間軸で見る
長期投資家は
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10年
-
20年
というスパンでPBRの推移を見る。
✔ 徐々に上がる → 資本を増やし続けている
✔ 横ばい → 成熟産業
✖ 下がり続ける → 価値破壊
PBRは
経営の通信簿を“長期”で可視化する指標である。
見方③:自社株買い・配当との整合性
PBRが低いのに
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自社株買いをしない
-
配当も増やさない
これは
資本政策が機能していないサイン。
逆に
PBRが高くても
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投資
-
還元
のバランスが取れていれば、
長期投資では問題にならない。
永久投資家にとってのPBRの正しい位置づけ
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PBRは「割安指標」ではない
-
PBRは「経営の姿勢」を映す
-
PBRは「過去と未来の交差点」
低PBRだから買うのではない。
高PBRだから避けるのでもない。
なぜこのPBRなのかを説明できるか。
それができなければ、
その投資は長期に耐えない。
結論:PBRとは「資本を信じていいか」を問う指標
PERが
利益の評価だとすれば、
PBRは
経営そのものの評価である。
長期投資家、永久投資家にとって重要なのは、
この会社に、
資本を預け続けたいと思えるか。
PBRはその問いを、
静かに、しかし執拗に投げかけてくる。
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