2025年3月1日土曜日

長期投資家にとって「PER」とは?

 ―― それは“割安・割高”を測る指標ではない

PER(株価収益率)は、投資の世界で最も有名な指標かもしれない。
しかし同時に、最も誤解されている指標でもある。

長期投資家、ましてや永久投資を考える投資家にとって、
PERは「答え」ではない。
問いを立てるための道具にすぎない。


そもそもPERとは何か

PERとは

株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)

で計算される。

一般的には

  • PERが低い → 割安

  • PERが高い → 割高

と説明されるが、
この理解のまま長期投資をすると、ほぼ確実に失敗する。

なぜならPERは、
企業の“現在の状態”しか映していないからだ。


長期投資家がPERを信用してはいけない理由

理由①:利益は最もブレやすい数字

EPSは

  • 景気

  • 為替

  • 一時損益

によって簡単に歪む。

とくに長寿企業ほど

  • 不況時に利益が落ち

  • 好況時に回復する

ため、PERは周期的に上下する

低PERで買って安心した瞬間が、
実は利益のピークであることも珍しくない。


理由②:PERは「企業の寿命」を語らない

PERは

  • 技術が陳腐化するか

  • ビジネスモデルが残るか

  • 社会から必要とされ続けるか

を一切教えてくれない。

永久投資で最も重要なのは

「この会社は20年後も存在しているか?」

だがPERは、
この問いに対して完全に沈黙する。


理由③:低PERは“危険信号”であることも多い

市場は意外と賢い。

  • 構造的に縮小する産業

  • 技術転換に乗り遅れた企業

  • ガバナンスに問題のある会社

こうした企業は
PERが低いまま放置される

PERが低い理由を説明できない投資は、
単なる「願望」だ。


それでも長期投資家がPERを見る理由

では、PERは無意味なのか。
答えはNO

長期投資家にとってPERは、
**企業を理解するための“違和感センサー”**である。


見方①:過去との比較

  • 過去10年の平均PER

  • 不況期・好況期のレンジ

これと比べて今はどこにいるのか。

✔ 常に高い → 市場が“質”を評価している
✔ 大きく上下 → 事業が循環型
✔ 低下傾向 → 構造変化の可能性

PERは「履歴」で見る。


見方②:同業との比較

PERは

  • 競争優位

  • 利益の安定性

  • 参入障壁

を、市場がどう見ているかの集合知だ。

同業より高いPERが
✔ 長年続いている → 強い
✖ 最近だけ高い → 期待先行

この違いは決定的。


見方③:PERを分解して考える

PERは実は

PER = 成長期待 × 安定性 × 資本効率

の掛け算でできている。

高PER=割高、ではなく
「多くを期待されている」状態

長期投資家は

その期待は、10年後も正当化されるか?

を考える。


永久投資家にとってのPERの正しい位置づけ

  • 買い判断の根拠にしない

  • だが無視もしない

  • 他の指標(ROIC・CF・粗利)と必ず組み合わせる

PER単体での判断は、
長期投資では思考停止に等しい。


結論:PERとは「市場との対話ツール」である

PERは、
「この企業を、市場は今どう見ているか」
を知るための翻訳機にすぎない。

長期投資家が向き合うべき相手は
市場ではなく、企業の時間だ。

PERが低いから買うのではない。
PERが高いから避けるのでもない。

それでもこの企業を10年、20年持ち続けたいか。
PERは、その覚悟を問い返してくる指標なのである。

 

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