―― それは“割安・割高”を測る指標ではない
PER(株価収益率)は、投資の世界で最も有名な指標かもしれない。
しかし同時に、最も誤解されている指標でもある。
長期投資家、ましてや永久投資を考える投資家にとって、
PERは「答え」ではない。
問いを立てるための道具にすぎない。
そもそもPERとは何か
PERとは
株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
で計算される。
一般的には
-
PERが低い → 割安
-
PERが高い → 割高
と説明されるが、
この理解のまま長期投資をすると、ほぼ確実に失敗する。
なぜならPERは、
企業の“現在の状態”しか映していないからだ。
長期投資家がPERを信用してはいけない理由
理由①:利益は最もブレやすい数字
EPSは
-
景気
-
為替
-
一時損益
によって簡単に歪む。
とくに長寿企業ほど
-
不況時に利益が落ち
-
好況時に回復する
ため、PERは周期的に上下する。
低PERで買って安心した瞬間が、
実は利益のピークであることも珍しくない。
理由②:PERは「企業の寿命」を語らない
PERは
-
技術が陳腐化するか
-
ビジネスモデルが残るか
-
社会から必要とされ続けるか
を一切教えてくれない。
永久投資で最も重要なのは
「この会社は20年後も存在しているか?」
だがPERは、
この問いに対して完全に沈黙する。
理由③:低PERは“危険信号”であることも多い
市場は意外と賢い。
-
構造的に縮小する産業
-
技術転換に乗り遅れた企業
-
ガバナンスに問題のある会社
こうした企業は
PERが低いまま放置される。
PERが低い理由を説明できない投資は、
単なる「願望」だ。
それでも長期投資家がPERを見る理由
では、PERは無意味なのか。
答えはNO。
長期投資家にとってPERは、
**企業を理解するための“違和感センサー”**である。
見方①:過去との比較
-
過去10年の平均PER
-
不況期・好況期のレンジ
これと比べて今はどこにいるのか。
✔ 常に高い → 市場が“質”を評価している
✔ 大きく上下 → 事業が循環型
✔ 低下傾向 → 構造変化の可能性
PERは「履歴」で見る。
見方②:同業との比較
PERは
-
競争優位
-
利益の安定性
-
参入障壁
を、市場がどう見ているかの集合知だ。
同業より高いPERが
✔ 長年続いている → 強い
✖ 最近だけ高い → 期待先行
この違いは決定的。
見方③:PERを分解して考える
PERは実は
PER = 成長期待 × 安定性 × 資本効率
の掛け算でできている。
高PER=割高、ではなく
「多くを期待されている」状態。
長期投資家は
その期待は、10年後も正当化されるか?
を考える。
永久投資家にとってのPERの正しい位置づけ
-
買い判断の根拠にしない
-
だが無視もしない
-
他の指標(ROIC・CF・粗利)と必ず組み合わせる
PER単体での判断は、
長期投資では思考停止に等しい。
結論:PERとは「市場との対話ツール」である
PERは、
「この企業を、市場は今どう見ているか」
を知るための翻訳機にすぎない。
長期投資家が向き合うべき相手は
市場ではなく、企業の時間だ。
PERが低いから買うのではない。
PERが高いから避けるのでもない。
それでもこの企業を10年、20年持ち続けたいか。
PERは、その覚悟を問い返してくる指標なのである。
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