2026年9月5日土曜日

北海道瓦斯

北海道ガス――北海道の暮らしを支えて115年、変わり続ける長寿企業

「長寿企業に永久投資」では、今回から47都道府県の長寿企業にも目を向けていきたいと思います。

記念すべき北海道編で取り上げるのは、**北海道ガス(9534)**です。

北海道ガスは1911年に設立され、2026年で115年を迎えます。

現在では「北ガス」の愛称で親しまれ、都市ガスだけでなく電力やエネルギーサービスまで事業領域を広げています。

115年前に生まれた会社が、北海道のエネルギー事情の変化に合わせて姿を変えながら、現在も地域の暮らしを支えている。

今回は、そんな北海道ガスの歴史と、長期投資先としての魅力を見ていきましょう。


北海道ガスは誰が創業した会社なのか?

北海道ガスについて調べると、ここは少し注意が必要です。

「創業者は○○」と一人の人物を挙げられる会社ではありません。

1910年、北海道の各都市で計画されていた都市ガス事業を一つにまとめる動きが始まりました。

その際、久米良作を出願人総代とする59名が北海道での都市ガス事業の許可を申請しています。

そして同年11月には発起人総会が開かれ、高松豊吉を委員長とする創立委員会が組織されました。翌1911年6月29日に創立総会が開催され、7月12日に会社設立の登記が完了しています。初代会長には高松豊吉が就任しました。

そして、ここで忘れてはいけない人物がいます。

渋沢栄一です。

渋沢栄一は北海道ガスの「創業者」ではありません。

しかし、渋沢栄一記念財団の資料には、北海道瓦斯について渋沢栄一の関わりを**「発起人、株主」**と明記しています。1910年には高松豊吉、久米良作らとともに北海道各都市へガスを供給する会社の設立を出願し、発起人総会にも参加しています。

したがって、北海道ガスは、

「渋沢栄一らが設立に関わった会社」

と表現するのが正確でしょう。


1911年に設立、翌年にはガス供給を開始

北海道ガスが設立されたのは、

1911年7月12日。

そして翌1912年には、札幌・小樽・函館の3地区でガス事業を開始しました。開始当初のお客さまは3,600件だったそうです。

当時の北海道では、ガスは現在ほど一般的なエネルギーではありませんでした。

北海道では薪や石炭が比較的安価だったため、炊事や暖房にガスを使う家庭はまだ少なかったといいます。

それでも都市化が進み、人々の暮らしが変化するにつれて、ガスの需要も徐々に拡大していきました。

つまり北海道ガスの歴史は、

北海道の都市化と近代化の歴史そのもの

でもあるのです。


「ガス会社」なのに、ガスだけにこだわらなかった

北海道ガスの115年を振り返ると、非常に面白いことがあります。

それは、

「ガスを売り続けた会社」ではあるものの、「同じガスに固執した会社」ではない

ということです。

創業当初は北海道産の石炭を原料として都市ガスを製造していました。

その後、時代の変化とともに石炭から石油系原料へ転換。

そして現在では天然ガス・LNGを中心としたエネルギー供給へと変化しています。

北海道ガスの沿革を見ると、1965年には石炭から石油系原料への転換が完了し、その後天然ガスへの転換を進めています。

さらに現在は、

都市ガス+電力+省エネルギー+再生可能エネルギー

へと事業領域を広げています。

ここに私は、長寿企業の本質を見ることができます。

守るものは守る。

しかし、変えるべきものは大胆に変える。

北海道ガスが守ってきたのは「ガス」という商品ではありません。

北海道の暮らしに必要なエネルギーを届けるという役割

なのではないでしょうか。


北海道ガスの企業理念

そんな北海道ガスが掲げている企業理念が、

「次代のエネルギーを考え、北の生活文化を創造する、『地域のパイオニア』をめざす。」

です。

この理念は、北海道ガスの115年の歴史を非常によく表していると思います。

「ガスを売る会社」ではなく、

「次代のエネルギーを考える会社」

と自ら定義しているからです。

さらに経営の基本方針では、

「常にお客さまの視点に立ち、天然ガスの普及拡大と先進的なエネルギーサービスの提供を通じて、地域社会の発展に寄与するとともに、低炭素社会の実現に貢献する。」

としています。

私は、ここに長寿企業としての強さがあると思います。


北海道ガスの強みは「地域に根付いていること」

北海道ガスの最大の強みは何でしょうか。

私は、地域に根付いたインフラ企業であることだと考えます。

都市ガスは、単純に商品を仕入れて販売するビジネスではありません。

長年にわたって、

  • 導管網
  • 保安体制
  • エネルギー供給設備
  • 顧客基盤
  • 地域との信頼関係

を築く必要があります。

北海道ガスは115年にわたって、それを積み上げてきました。

現在も札幌、小樽、函館、千歳、北見などで都市ガスを供給し、石狩LNG基地を拠点に道内へ天然ガスを供給しています。

この「簡単には真似できない地域インフラ」が、長期投資家にとって大きな魅力です。


これからの北海道ガスは「総合エネルギー企業」へ

もちろん、北海道ガスにも大きな課題があります。

最大の一つは、脱炭素化でしょう。

天然ガスは石炭や石油に比べてCO₂排出量が少ないとはいえ、化石燃料であることには変わりません。

そこで北海道ガスは、「Challenge 2030」という経営計画を掲げています。

省エネルギー、再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、水素・メタネーションなど、次世代のエネルギー技術にも取り組む方針です。

これは非常に重要です。

北海道ガスの未来を考えるとき、

「これからもガス需要が伸びるか?」

だけを見るべきではありません。

むしろ、

「北海道のエネルギー需要が変化したとき、北海道ガスも変化できるか?」

を見るべきでしょう。

115年間生き残ってきた会社だけに、私はこの変化への対応力に期待したいところです。


2026年3月期の業績

では、投資家として数字を確認してみましょう。

2026年3月期は、

売上高1,745億円

営業利益164億円

経常利益165億円

親会社株主に帰属する当期純利益115億円

となりました。

前年と比較すると、売上高は2.5%増、営業利益は14.7%増、純利益は10.8%増です。

営業利益率も、

8.4% → 9.4%

へ改善しています。

利益面では、しっかり回復してきた決算と言えるでしょう。


長期投資向け簡易指標

ここでは、これまでの記事と同じく過去3年間を並べてみます。

指標2024年3月期2025年3月期2026年3月期
売上高1,738.9億円1,703.0億円1,745.2億円
営業利益率9.0%8.4%9.4%
ROA8.6%7.6%8.4%
自己資本比率41.2%44.1%49.1%
1株配当16円19円24.5円

2024年3月期、2025年3月期、2026年3月期の業績・ROA・自己資本比率は各年度の決算資料で確認しました。

特に注目したいのは、

自己資本比率の改善

です。

41.2%から44.1%、そして49.1%。

利益を積み上げながら財務体質も改善しています。

また配当も、

16円 → 19円 → 24.5円

と増えています。

会社は2027年3月期についても27円を予想しており、累進配当を基本としながらDOE2.5%を目標とする配当方針を掲げています。


10年平均利益成長率は?

北海道ガスの10年間の利益成長率も見てみましょう。

2016年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は11.51億円

2026年3月期は115.25億円です。

これを10年間のCAGRで計算すると、

約25.9%

となります。

かなり高い数字です。

ただし、ここは注意が必要です。

2016年3月期の利益水準が非常に低かったため、その後の利益回復が大きく数字に反映されています。

実際、2016年3月期の利益は11.5億円でしたが、2017年3月期には13.0億円、2018年3月期には19.2億円と推移し、その後大きく利益水準を高めています。

したがって、

「毎年25.9%成長する会社」

と考えるのは危険です。

むしろ、

「10年前と比較して、利益を大幅に増やしてきた会社」

と評価するのが適切でしょう。


今後の業績には注意も必要

2026年3月期は好決算でしたが、2027年3月期について会社は慎重な見通しを出しています。

売上高は、

1,745億円 → 1,902億円

と9.0%増える一方、

営業利益は、

164億円 → 128億円

と22.1%減、

純利益も、

115億円 → 94億円

と18.5%減を予想しています。

つまり、今期は「増収減益」の予想です。

これは長期投資家として、しっかり頭に入れておきたいところです。

一方で、配当は24.5円から27円への増配を予定しています。

短期的な利益変動はあるものの、会社が株主還元を重視していることは評価できます。


長期投資オススメ度

★★★★☆ 4 / 5

私は北海道ガスを、長期投資候補としてかなり魅力のある会社だと考えます。

理由は、

  • 115年の長い歴史
  • 北海道に根付いたインフラ
  • 高い参入障壁
  • 安定した顧客基盤
  • 改善する自己資本比率
  • 増配傾向
  • ガスから電力・総合エネルギーへの事業転換

です。

特に私が評価したいのは、

「変化することを恐れていない」

ところです。

一方で、

  • 北海道の人口減少
  • ガス需要の長期的な変化
  • 脱炭素化
  • 2027年3月期の減益予想

という課題もあります。

したがって、満点の★★★★★ではなく、

★★★★☆

としました。


北海道ガス(9534)まとめ

設立:1911年

創立者:特定の個人ではなく、複数の発起人による

渋沢栄一:発起人・株主として設立に関与

2026年で115年

10年利益成長率:約25.9%

ROA:8.4%

自己資本比率:49.1%

予想配当:27円

予想PER:約7.4倍

PBR:約0.71倍

配当利回り:約3.4%

長期投資オススメ度

★★★★☆

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※本記事は企業研究・投資研究を目的としたものであり、特定の株式の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任で行うものであり、本記事の内容に基づいて生じたいかなる損失についても、著者および本ブログは一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、最新の決算資料、有価証券報告書、適時開示資料等をご自身で確認したうえで、ご自身の責任において行ってください。

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